ヨーロッパ訪問記最終回
Disclaimer
利根川が代表を務めるNPO法人みんなのコードはGoogle.orgから寄付を受けています。 本渡欧についての旅費交通費は自己負担ですが、現地での交通や一部の食事についての便宜をGoogleより受けております。 本ブログについては、Google社ではなく、利根川の意向で執筆・公開しています。
1. アニカさん@スウェーデンヒアリング
1-1. Digitization or Digitalization?
- Digitization
- 情報を形式的にデジタルで扱うようにし、その業務のフロー等は変えないこと
- 以下、「表面的なデジタル化」という
Digitalization
- 情報をデジタルで扱うようにするだけでなく、本質的には情報の扱い方から変えて効果を最大化
- 以下、「本質的なデジタル化」という
例えば、(利根川の理解)
- 紙の時刻表を
- PDFにする > 表面的なデジタル化
- 乗換案内にする > 本質的なデジタル化
- 1人1台デバイスで
- 引き続き一斉指導・知識伝達型 > 表面的なデジタル化
- 個別最適化・学習履歴の有効活用等 > 本質的なデジタル化
- 紙の時刻表を
1-2. 立ち上げ
- 2009年 Sollentuna 市で先生をしていた
- 1人1台の試行が始まった。
- 本質的なデジタル化に取り組もうと決意
- その際に Google Drive等を使おうと決めた
- ネガティブなメディア報道や教育大臣も含め周囲の期待は高かったが、Wi-Fiが遅くて全然使い物にならず。
- ハイプサイクルでお約束の「幻滅期」に突入。
- 2010年から大学での研究と Sollentuna 市の研究開発コーディネーターに
1-3. 仕切り直し
- 教育学的知見に基づいて、最初から仕切り直した後、2013年の9歳の Literacy and Math のテスト結果にて、 「表面的なデジタル化 < 従来型 < 本質的なデジタル化」 となった。
- 本質的なデジタル化ではWTL(Write to Learn)法を実施
- 予め目標を共有
- 生徒同士は目標を見ながらGoogle classroom 等でお互いが書いたものに対してフィードバックしながら学ぶ
- Technology そのものがよいか悪いかではなく、使い方により結果が変わる。
- その後、先生向け・管理職向けもリサーチを実施 (メモ等整理が追いつかずブログでは詳細割愛...)
1-4. 拡大期
- もともと「各地各学校の自主性を重んじる」方向であったが、ことデジタルについては“自治体間格差” が問題となった
- どこかで聞いた話...
- 2017年 A national strategy for the digitalization of school ができた
- 2019年にアクションプラン実現するべく働き変えているが、18の提案に対してまだ5,6しか実行に移せていないので道は半ば。
- 学校内のリーダー不足も問題となっている
- スウェーデンは(フィンランドと違い)リーダーシップを取りたがる人が少なく、全会一致しないと動かないので歩みが遅い
- どこかで聞いた話...
1-5. 総論
- 表面的なデジタル化 / 本質的なデジタル化 という切り口は深い問いとして自分の中でもまだ消化不良
- 悩みは似ている部分があり、現地も見てみたい欲が出てきた。
2. BETT 視察
2年ぶり2回目のBETT Show。
前回は Micro:bit 教育財団とつながり、最近のプログル理科キット等に繋がったのが振り返ると最大の収穫。
今回は丸一日弱見て回り気になったプロダクトをいくつか紹介
2-1. Kano Computer
- 子供向け自作PCキットのKano Computer。
- 文具のように使うものを自作して同梱のステッカーも貼れたりして愛着を持って使えそうなので面白いプロダクト。
- ただ、従来は ラズパイにLinux系OS + 独自アプリという構成であったため、英語わからないと辛いなーというところだった。
- 最新版は「Windows10」が展示されていた!お値段は 299USドル也。
- Wi-Fiもあり、タッチスクリーンも物理キーボードもあり。
- もしや、今話題のGIGAスクール仕様じゃないか!?と思いましたが、あいにくカメラが着いていない。
2-2. Impero
- クラスルーム&ネットワークマネジメントシステム。
- 普通の先生でも使いやすいUI、IT管理者用にはもう少し高度(だが使いやすそう)な画面。
- クラス内のアクセス制限はそのクラスの先生がその場で解除(や制限も)出来るようになっている。
- アクセス制限した場合はそのスクリーンキャプチャが先生画面で見えている。
2-3. Prowise
既存の電子黒板で「本質的なデジタル化」を指向している製品。
ざっくり言うと
- 電子黒板
- Apple TV・ChromeCastのようなキャストシステム
- SkyMenuのようなクラスマネジメントシステムをはじめとした各種アプリ
が一体になっている。
3.全体として
あくまでサンプル数が少ない中の感想ですが、
アプリ
- 日本語だけだとマーケットが小さい & 日本の学校文化が独自であるため、アプリが少ない。数十分の一の印象。
制度の硬直性
- 人口1億人に均質な教育を届けているのが日本の良さではあるが、新しい取り組みには今回視察した各地のように、学校・校長への裁量権が必要。
- 一方で視察していない普通の学校がどんなものか分からないので単純な優劣を語るのは不適切。
- 学校と一体の公共体育館にカフェが併設されていたり、オフィスのあり方は数十年でどんどん進歩しているので学校ももっと変化しなくては。
リーダーシップ (主に校長)
- まずは抽象的でも良いのでエッジの効いたビジョンが必要。(「豊かな心を育み 自ら学び たくましく生きる子ども」とかそういう無難なのではなく。)
- 校長のリーダーシップの下、カリキュラム編成、インフラ整備、人事等の校長の権限を使い体制を整える。
- チームのチャレンジ・アクションを推奨し、失敗を許容する。
- 一発でうまく行かないので、改善を続ける。
- 不適切なメンバーにはチームを離れてもらっている。
- 新しい時代には、若いリーダーが必要。
先生
インフラ
- まともなWi-Fi大事。超大事。
- フィルタリングがという話を現場では聞かなかった。日本の学校現場で教育に差し支えるフィルタリングってなんなんだろう。
- (BETTでは製品の展示が合ったので存在してはいると思う。)
- 1人1アカウントでどのデバイスでもログイン後同じ状態で使えるChromebookよい
子ども
- とりあえずスライドが派手になるとかは万国共通で微笑ましかった。
- タイピングはやい (日本が遅いだけ?)
- 彼/彼女が英語話せなくても、Google翻訳を使いこなしてコミュニケーションしている。
まとめのまとめ
- 自分は日々日本の教育現場と向き合うばかりで、頭固く視野が狭くなっていたなと反省。
- 「海外進んでいますか?日本負けていませんか?」とかそういう単純な話に意味はない。
- 上手くいっている点から学び、日本の強みも活かし、少しづつでも良くしていくのみ。
- 一方で単純に一部のスナップショットだけを持ってこようというのもナンセンスなので、きちんとしたインプリメンテーションが必要。