【書評】コンピューターを使わないプログラミング入門の絵本「ルビィのぼうけん」
本日発売のリンダルーカスさんの「 ルビィのぼうけん 」の待望の日本語版を読みまして速攻レビューです。
- 作者: リンダ・リウカス,鳥井雪
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2016/05/20
- メディア: 大型本
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何が素敵か
まず、「プログラミング・コンピューターって楽しい」というのを子ども(特に女の子)に伝えたいというリンダさんのビジョンが素敵です。
その上で、可愛らしいキャラクターの世界を創り(前半)、自分たちの生活と関連するテーマで考える(後半)の二部構成で、
未就学児からプログラマー的思考法 (Computational Thinking )と触れることができ、 ビジョンが形になっている のがさらに素敵です。
この本のクラウドファンディングでのメッセージビデオ
プログラミング教育での想定される使い方
1. 未就学児からプログラミング学習が出来そう
前半の絵本を読み聞かせてから 後半のアクティビティをグループワークでやると良さそう。
2. アクティビティには小学校の授業でも使いたいコンテンツが
私たちのワークショップでも、導入にロボットゲーム (ロボットとプログラマーのペアになり、ふせんのブロックプログラミングをする)を実施することがあるのですが、
- 練習8でロボットゲームが可愛らしいキャラとブロックになっていて流石だなと思ったり(絵本なので紙の上ですが)、
- 練習12では、ブロックプログラミングでダンスを作ったら楽しそうだなとか、
- 練習15は身近な題材(トイレ、犬等)がコンピューターになったらどうなるか考えるとか楽しそうだなとか
自分たちの導入やまとめで使いたいコンテンツが、いくつもありました。
こんな人におすすめしたい
1. 学校の先生(特に幼稚園・小学校)
プログラミング教育よく分からない人にお薦めです。
(さすがにこの本だけで、授業を実施するのは少し怖い気がしますが...)
2. 小さなお子さんのいるお父さん・お母さん
- 未就学児: ぜひ読んであげてください。(特に女の子!!)
- 小学校低学年: 私たちのおすすめする Hour of Code も出来るのですが、この絵本→Hour of Code が良さそうです。
一緒に授業で使ってみたい学校を募集します。
Hour of Code + ルビィのぼうけん を使った授業をしてみたいと思います。
(繋がっている方は)Facebook or info@code.or.jp or @yutatone にご連絡ください。
- 作者: リンダ・リウカス,鳥井雪
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2016/05/20
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小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議 (第一回) で発表してきました
本日5月13日「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」が開催され、発表の時間をいただきました。
www.slideshare.net
私としては、「プログラミング必修化」というからには 「きちんと 『プログラミングを学ぶ』 という取組をし、その後各教科での『プログラミングで学ぶ』に進みましょう」という呼びかけが 一番のキーメッセージでした。
当日は、その他に
- 人工知能について 松尾 東京大学准教授
- 文部科学省の教育課程について 大杉 教育課程課教育課程企画室長
- NPO法人CANVASの取り組みについて 石戸 奈々子理事長
- 作曲とプログラミングについて ヤマハの隅井様
- シリコンバレーからみた日本の小学校教育について 伊佐山CEO@WiL
との濃厚な顔ぶれでした。
印象に残った点
個人的には、松尾先生のAI(DeepLearning)の発表と伊佐山さんのシリコンバレーからの視点が印象的でした。
松尾先生には質問もさせていただいたのですが、
AIが社会で必要とされているのはその通りで、その必要条件として、「数理的な考え」、「プログラミング」が必要になるとのことで、第4次産業革命で人工知能の活用等が必要だとの声を上手く使いつつ、小学校段階では何をすべきかとの議論が深まると良いなと感じました。
また、伊佐山さんの発表の「プログラミング/コーディング」ばかりではなく、情操教育といった点がシリコンバレーで重視されているとの話は興味深く。シリコンバレーの現状が単なる揺り戻しなのか、日本のComputational Thinking はどうあるべきかの議論が深まると良いなと思っております。
今後気になる論点
一方で、各委員からの意見等であったのが、
「10年に一度」の指導要領改訂のサイクルが長すぎる問題が複数の委員から指摘されていました。
社会の進み方が早くなっている中、学校教育がどうこれと向き合うのかは重要なissueです。
自由度をもたせつつ、着実な実施をどうやって担保するのかは工夫が必要だと考えております。
現場からは取り急ぎ以上です
小学校段階のプログラミング教育に関する有識者会議の委員を拝命しました
小学校段階における倫理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議の設置について:文部科学省 (*1)
2015年7月に一般社団法人みんなのコードを設立し、
「単に日本国内でのHour of Codeを普及させるだけでなく、公教育でのプログラミング必修化を推進する」とのミッションを持ち、
日々前を見て頑張っておりました所、掲題の委員を拝命しました!
(そうそうたるメンバーの方の中に入れていただき身の引き締まる思いです。)
これは、いつも支援していただいている皆さまのお陰に他なりません。
一般社団法人みんなのコードの強みは、
- 実業界の方からの様々な支援や私自身の実務経験
- 学校教育での実践や課題感
- 海外での知見
等があると考え、チャンスを頂いたからには最大限この機会を活かそうと考えております。
有識者会議へのアドバイス大歓迎ですので、既に繋がっている方はFacebook 、そうでない方も TwitterやBlogコメント等でメッセージいただけたらと思います!
(*1 x倫理的→o論理的だと思われます。)
プログラミング教育の必修化までの道のりで予想される課題について
新成長戦略でプログラミングの必修化についてのリーク記事がでました。
官邸で示されるのはあくまで「方針」だけで、 官邸 → 文部科学省 → 各教育委員会 → 学校・教員 との具体的実施までのステップが肝要です。
この後、想定される課題を列挙しますと、
1. 各段階での目標整理
新成長戦略公表の段階では抽象的な表現にとどまるので、各段階でのゴール設定が必要になります。
成長戦略の想定する「 社会をリードする人材 」の教育の面と
公教育が想定する必要のある「 中間〜諸々の課題のある層 」への教育の面の
すり合わせが必要になってきます。
具体的には先行する諸外国での基準を参考にしつつ、
全教科のカリキュラムとの整合性を意識し、
各学校修了段階 → 各学年 での目標整理を実施する形になるかと想定されます。
2. 単元設計
各段階の目標が決まると、単元の設計が必要になります。
記事中での「ホームページ作成」がプログラミング教育かというツッコミは別としても、
狭義の「ソフトウェアのプログラミング」だけでなく、
- 「ロボやセンサー等のハードウェア」も含むのか
- フィジカルコンピューティングのレイヤーから扱うのか
- データベース、ネットワークといった領域を扱うのか
といった領域の議論や、既存の指導内容との整合性等を整理する必要があります。
3. 教材設計
単元設計の後、各単元の中での教材設計が必要になります。
といった論点やその効果検証が必要になります。
4. 指導者の育成
記事中では「産業界には、教材の開発や講師の派遣などで協力を求める考えだ。」とありますが、
公教育ですので、北海道から沖縄まで2万2千の小学校、1万1千の中学校で指導する必要があります。
- 「既存の学校の先生」で指導する形にするのか、
- 英語におけるALT(外国語指導助手) のような形で派遣するのか、
いずれにせよ指導人材の育成が必要になってきます。
その他平行して、
- 地域ごとの格差が激しいインフラの整備
- 世論の醸成(無関心 or 反対から賛成へ)
- 先行しての実証実験の実施
等が必要になってきます。
みんなのコードとしては、これらの課題を関係各方面と協調してクリアしていく所存です。
2016/4/16 21:10追記 導入にあたっては、何かの時間を削るという意思決定も必要かと。 政治レベルで必要な意思決定としてはこちらの方が難しいかと考えています。
厚切りジェイソンさん と Scratchと Hour of Code と
NHK Eテレで厚切りジェイソンさん司会でScratchを使用したプログラミング番組が始まるとのことです。
Hour of Code教材を推していると、人とお会いする時によくScratchと比較されるのですが、 こうやってNHKの番組になるのは、とても嬉しいニュースです。
なぜ嬉しいか
みんなのコードや Hour of Code で目指しているビジョンは「コンピューター科学教育の普及」です。
その 「手段」 として、多くの子どもが楽しめるかつ大人が教え易いよう Hour of Code 教材を提供しているだけで、こうやって「 目指すビジョン 」に日本国内の実体が近づくのは、素直に嬉しく思えます。
どうしたいのか
各プログラミング教材プレイヤーにおいては自教材が当然になるとは思いますが、私は小さいパイを奪い合うのではなく、パイを大きくする方向へ 一緒に 進みたいなと考えています。
昨日も朝日新聞の「小学生は超多忙 時間割すでにパンパン、さらに英語も…」との記事がバズっていましたが、 特に学校現場では 「限られた時間数の中で何を教えるのか」 の議論が常に有ります。
本当に2030年代の大人に必要となるであろうことを取捨選択する必要があると考えていて、その時間の再配分に向けて業界を上げてプログラミング教育への世論の支持を作りたいと考えています。
( あくまで例えばですが 、そろばんは3,4年生で合計6時間程度、書道には3年生以上で合計約120時間が割かれています。)
Scratchとの使い分け
Hour of Code推しだと、よく聞かれる質問です。
「 どちらか一方が常に優れているということはなく、子どもと指導者の状況によりどちらがベターか決まる 」と考えています。
プログラミング教材をビジュアルプログラミングかテキストプログラミングかという軸と、チュートリアル型か自由型かのマップが下記になります。
一般的に初学の教材を選ぶ時の一般論での比較になりますが、
- ビジュアル vs テキスト ですと、
- チュートリアル vs 自由 ですと、
- チュートリアルの方が、教材が導いてくれるので、指導が容易
- 自由型の方が、子どもの作りたい物を作れたら創造する能力・問題解決能力を育むことができる
とそれぞれにメリットがあります。
(※ あくまで一般論でして、個別の教材の出来ること出来ないことや、使用機材、ネットワーク有無、時間数等で教材は選択するべきです。)
なので、順番の違いはあれど、なるべく右下を目指し、学習を進めることになります。
また私自身も、子ども・指導者の状況が許せば、右/下から始めても良いと考えていますし、ビジュアルxチュートリアル から始めた子どもについても、最終的に テキスト x 自由 の世界に進んで欲しいと思っています。
いずれにせよ
3月の番組が楽しみです!
自己紹介・私がコンピューター科学教育普及に取り組む理由
自己紹介
利根川 裕太といいます。
一般社団法人みんなのコードの代表をしていて、日本国内のコンピューター科学教育(特にプログラミング教育)の普及活動をしています。
プログラミング教育の出会い
2014年10月、立ち上がりから携わっていたラクスル株式会社 (現在は非常勤)で 人事を担当している人から「一時間で非エンジニアにプログラミングのエッセンスを教えてほしい」との依頼を受け、 たまたま、 Hour of Code (アワーオブコード) の活動を知りました。
そのHour of Code のコンテンツが秀逸で、大人でも子どもでもプログラミングを初めて楽しく学ぶのにいいと思い 同2014年の12月のコンピューター科学教育週間に Hour of Code のボランティアワークショップの一日開催を経て、 この活動を日本に本格的に持ってこようと決めました。
Hour of Code って何?
2013年にアメリカで始まった世界的なプログラミング教育の入門・啓発キャンペーンです。
アメリカのNPO Code.org がキャンペーンの主唱者です。
2015年は約20万のワークショップが世界180ヵ国以上で開催され、うち日本国内は約200箇所でした。
Code.org は発起人にFacebook創業者マーク・ザッカーバーグ氏やMicrosoft 創業者 ビル・ゲイツ氏が加わっていて、オバマ大統領もホワイトハウスに子どもを招きプログラミングを実施し、キャンペーンへの参加を呼びかけました。
日本国内では、Code.orgのグローバルな呼びかけに加えて、私達「みんなのコード」が企業、学校、NPO、ボランティア等々への参加を呼びかけています。
Hour of Code ではどんな教材を使うの?
実はどのような教材を使っても構いません。Scratch、Codemonkey 等の"提携オンライン教材"もありますし、 紙ベースでの学習もOKになっています。
ただ、小学生に指導しやすいように Code.orgが用意している教材 があります。 教材についてだけでBlogが5回くらい書けるのですが、ざっくり特徴を書くと
- オンラインで無料提供なので、インストール/環境構築不要ですぐ使える。(タブレットでも使える!)
- 世界的な企業協力で子どもに人気なキャラクターが使われていて子どもが遊び感覚でできる(今年はマインクラフトとスターウォーズが追加)
- 日本語のブロックプログラミングなので、タイピングや英語の壁が無く始められ、繰り返しと条件分岐まで学習できる。 (中級者以上のコースでは、イベントハンドラーやJavaScriptのブロックプログラミング等もあります )
- 各コースは10~20のステージになっているので、子どもが迷わず進める (少ない大人で多くの子どもが学習できる。その分、Scratch等と比べると自由度は少ないですが、)
いずれも「いかにカジュアルにプログラミングを始められるか」にフォーカスしていて、「プログラミングかじったことある人なら、思い立ってすぐに指導できる」 あるいは 「プログラミングしたことないけど、学校の先生も事前に準備すればワークショップ開催できる」 ようになっています。
目指すビジョン
元々は Hour of Code のコンテンツとキャンペーンの主旨が良いなと思い始めた活動でしたが、 やるからには大きな目標で取り組もうと、 「日本のコンピューター科学教育」をどうにかしようと考え、
コンピューター教育が学校教育に取り入れられ、 日本全国の子どもたちが楽しくコンピューターの内面に触れ、 21世紀を活きる力を身に着けることを私たちは目指します。
とのビジョンを目指し、一般社団法人みんなのコードを設立しました。
学校でのコンピューター科学教育普及に取り組む理由
ITが世の中の仕組みを変えるスピードは過去10年もこの先の10年もそのさらに先の10年も速くなりつづけています。
一方で、日本の義務教育においては、コンピューターの仕組みを教える時間がほぼ無く (中学校の技術家庭の単元にはありますが、実施状況は先生に依ってまちまちなのが現状です)
しびれを切らした、意識の高く経済的余裕のある家庭の子どもの プログラミング塾 が各地で伸びています。
21世紀を活きる力として、 「テクノロジーを原理のレベルから理解・活用する力」 は誰しもに行き届いていないといけないのは問題だと思い
Hour of Codeによるプログラミング入門をきっかけとした「コンピューター科学教育」の普及の為に活動をしています。