フィンランドの学校教育事情視察してきました

Disclaimer

利根川が代表を務めるNPO法人みんなのコードはGoogle.orgから寄付を受けています。 本渡欧についての旅費交通費は自己負担ですが、現地での交通や一部の食事についての便宜をGoogleより受けております。 本ブログについては、Google社ではなく、利根川の意向で執筆・公開しています。

Google Educationチームの方とご一緒にBETT+ヨーロッパの学校を視察する機会に恵まれたので、

忘れないうちに自分の整理したメモを公開します。(誤字脱字や多少の聞き間違えあるかもしれません。。)

ハーマンキュラン校訪問

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“A school that is not a school”

「学校じゃないような学校」と生徒が言っていたとのこと

(最近EUではプライバシーが厳しく生徒が写っている写真はWEB公開NGです..)

1. 1人1台Chromebook, G Suite & Google classroom

  • 行政の予算で購入し、各自が好きなように使える。
  • (他の方が見たとのことですが)NETFLIXのアイコンがデスクトップにある子もいたり自由な様子
  • 座り方とかは学習規律重視の日本と違い自由であるが、端のソファーでスマホをいじっていた子も他の子がChromebookで開いているのと同じ画面を(おそらく自分の)スマホで見ているだけだった。
  • 各自の文具になっているので、廊下でも持ち歩いているし、調理実習にも持ち込んでいた(このときは使っていなかったが)
  • ちなみにICT支援員的な人は欲しいけど今は居ないとのこと
  • その代わり「ICTサポート委員会」みたいなのを生徒がやっている

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調理実習にもChromebook持ち込み|テーブルコーディネートが北欧風でおしゃれ

2. 学年150人を25人x6グループにし、1〜3グループで授業を実施している

  • 例えば数学だと3グループ約75人に対し、先生3人、特別支援の先生1人、アシスタント1人の体制。
  • 75人は各自の興味や進度に応じて小さなグループで学習をしている。
  • 75人が入る大部屋 (Learning areaと言っていた) の横に主として特別支援対象の生徒用に小さな部屋 (たしかLearning roomと言っていたはず)がある。
  • また、集中したい時には他の人の目線等が気になりにくいソファー等が有効につかわれているとのこと。
  • 先生同士も他の先生の教え方が見れるので好評とのこと。

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集中したいときのソファ

3. なぜこのような学校づくりをしているのか (校長・副校長セッションより)

  • “Why do we have the school?” と問うている
    • 「そこに学校があるから」はナンセンス
    • 1860年代にフィンランドでは学校が始まり、その後工業化社会において必要な決まったことをきちんと実施する教育を当時は実施してきた。しかし、社会で必要な資質能力は劇的なスピードで変化している。
  • どのような資質能力が必要になるか
    • 「個別に/共同的に学ぶプロセスを理解する」ことが大事
    • ↑は各教科の学びと”少なく見積もっても同等かそれ以上に大事”
    • 指導要領(的なもの)で「各教科に共通するSkill」と「各教科の学び」があり、従来は前者を適当に済ます先生も居たが、こちらの学校では前者重視にシフトしている。
  • なぜ学びの個別最適化をしているのか
    • 子どもたちには彼/彼女のポテンシャルをフルに発揮して欲しい ← そりゃそうですよね。
    • そのためには「Try hard」が必要だが、そのために「がんばれ」というのでは無意味である。←ですよね
    • 一番本質的には子どもが「意味がある」と思うことをやることが大事。←ですよねー
    • しかし、「意味がある」と感じることには個人差がある。←ですね。
    • なので、「個別最適」な学びが必要になる。← なるほどー!

4. なぜこのような学校づくりができているのか

  • ご一緒した方とディスカッションしていたのですが「行政の予算(投資)」と「校長のリーダーシップ」という身も蓋もないところにたどり着きそう。
  • 行政の予算は生徒一人あたり教職員数やChromebookへの投資で見て取れる。
  • 校長のリーダーシップは日本と比較にならないほど強い
    • 校長の裁量で教員の採用ができる (なお、クビには簡単にできない)
    • 予算の権限も強い
      • 学習に必要な備品も校長の裁量でできる(食事・建物は対象外とのこと)
      • 人件費も (直接は聞かなかったが恐らく昇給判断も)
    • “enough”な教員経験があれば校長になれるとのことで、「5年もあればenough」とのこと
    • ゆえに30歳の校長とかも居て、変化の早い時代にはそういった校長が必要だとうとのこと(よく考えたら総理大臣34歳の国ですしね ^^;;;

5. 教育庁インタビュー

  • 先生は全国で約12万人
    • 尊敬される仕事として人気(給与がすごく良いわけではない)
    • 修士号が必要
    • 新採用の先生等に対人(児童生徒・保護者)対応を先輩がサポートすることが多い
    • 日本と同じく社会人経験ある人は少ない模様
  • 研修とか
    • Professional Development (研修) を年間数日受ける”必要”があり、そのために授業を離れることができる
    • 「日本だと行政の研修つまらないんだけど、どうなの?」との日本の先生から質問があった。同じ問題はフィンランドでもあるが行政がお金を出す研修についてはアンケートを取ってフィードバックしているとのこと
    • “Learning community” が草の根的にあり、日本で言う校内研、市内研、あるいは全国で特定のトピックのもの等様々な形があり似ている印象。行政がお金の面のバックアップをすることもあるらしい。
  • Innovation center
    • イノベーションセンターが教育庁の中にある(「そんな組織があるなんて先進的」とか思ったけど、よく考えたら日本にも「未来の学びコンソーシアム」とかあるし、日本も頑張ってる!)
    • 先生や外部の関係者による、多くの新しい実践があるが、「それぞれのポケットの中に留まっている」状態であるとの課題
    • 「実験ラボ」を設立、ざっくりの認識よくあるアクセラレーションプログラムの学校教育版 (課題定義→プロトタイピング etc)

総論

  • いわゆる課題感はほぼ同じ。
  • フィンランドで未来志向の教育をしている人と、日本で未来志向じゃない人とを比較した時、前者の方が話が通じる気がした。
  • 表面的にChromebookやグループワークに適した椅子とか買って真似してもしょうがなくて、背後の「どんな教育をしたいのか」のビジョンが大事。
  • 一方でビジョンだけで投資(Chromebook & G Suite) や人事(75人に教職員5人配置とか) ができないとビジョンは実現できない。