オランダの学校視察してきました。

Disclaimer

利根川が代表を務めるNPO法人みんなのコードはGoogle.orgから寄付を受けています。 本渡欧についての旅費交通費は自己負担ですが、現地での交通や一部の食事についての便宜をGoogleより受けております。 本ブログについては、Google社ではなく、利根川の意向で執筆・公開しています。

昨日のフィンランドに続き、同じく自分用のメモを整理して公開

昨日は教育の深い話が中心でしたが、今日はG Suite + Chromebookのテクニカルな話多め。 写真が原則web NGのため文字ばかりで伝わりにくいですがご容赦を。

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視察に伺った小学校

1.教育制度全般について

  • 4歳から学校に通える(5歳から義務教育)
  • 小学校卒業後、進学系と専門系に分かれる
  • 小中高大学全て教育は無料(オルタナティブ教育の学校含む)
  • 金融危機の際に、緊縮財政のため、教員を減らしたが団塊の世代が引退し現在教員不足に悩んでいる(どこかで聞いた話...)
  • 学校には三種類
    • Public Schools : 宗教・思想はない。誰でも入れる
    • Special Education Schools : 宗教等とかかわっているもの (親の選択 / いわゆる特別支援学校は3)
    • Schools for kids with special needs : 特別支援教育 (ADHD etc)
  • 1720万人の人口、140万人の小学生
  • 学校には児童生徒一人あたり年間 5000ユーロが政府から支給される

2. 視察先の学校

  • 午前1校、午後1校視察に行ったが、いずれも同じ財団が運営している公立学校
  • 7万人の街
  • 財団は10の学校を運営している

3. Chromebookへのロードマップ

  • 2012 試しに1台購入 > 2013 60台導入 (内40台Managed, 20台 not Managed)
    • 最終的にはManagedに寄せる方向に。
    • 盗難された際に消去する等の必要がある。
  • 2015 先生用に300台導入、サーバー(校内?財団内?)をやめて全てクラウド
  • 2020 1500台強のデバイス、1.9人に1台。
  • ChromeOSとWIndows機という共存は問題ないが、G SuiteとMS Officeの共存は課題があった。
    • 例えば地域の図書館から送られてくる添付ファイル等。

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廊下に置かれているChromebook

4. 体制・働き方

  • Rikさんは週2.5日ICT管理 / 週2日体育の先生として働いている。
    • そもそもオランダでは週40時間より短い事が多い > 週4日x9時間にして平日も子どもと一緒に過ごす等
    • フィンランドの男女平等は女性が従来の男性の働き方に寄る方向性だが、オランダの場合男性が従来の女性の働き方に寄る方向のよう
  • Q1. G Suite複雑だけどどう学んだ?
    • オランダ内で最初にGoogle系に統一した学校だったので、色々試行錯誤をしながら自習して学んだ。校内で副担当の人とディスカッションしながら進めた
  • Q2. Chromeアプリのインストールとかはどうなっている?
    • 先生が選んで、ITのスタッフがプライバシー等に問題が無いか確認している
    • 基本的には無料のもののみ。一部書籍等に付随の有料のものも使っている
    • 今後はGoogle Apps MarketPlace? も使いたい
  • Q3. BYODしているの?
    • 持って変えることはできないが、自宅のPC等でログインして同じ内容をみることはできる。
  • Q4. 保護者との連絡等ではつかわないの?
    • 使いたいが使っていない。プライバシー関係が今色々大変で・・・
      • こんなところにもGDPRの影響が

5. 政府・自治体の役割

  • お金:国→自治体→財団→学校
    • 各学校→財団 に戻してITで一括購入する
  • 建物は自治体が所有していることが多い。
  • 政府の役割
    • Goals to Achieve (小学校修了段階?)を決める
    • どのように達成するかは各学校で判断する
    • なのでxxの単元の標準時数はという概念はない

6. 研修

  • 教師同士の研修もある
  • 企業の有料のものにいくこともある
  • G Suite関係は自分で学ぶものもある

7. 学校の様子・時間割

  • 4歳からいるので幼稚園の雰囲気も強い
  • Chromebookは廊下の保管庫に置いてあり各児童が勝手に取ってログインしている。
  • 教室を見た感じ学校共通の「1校時」等は無く、教師が考える時間の単位で活動を進めているようだった。
    • 上述のようにxxを◯時間やらないといけないとかがないので
  • 時間割は原則として教師が決める
    • 各生徒がカスタマイズ?する余地がある
    • 早く終わった児童は廊下で興味あることをしているように見えた

8. Computational Thiningとかプログラミングとか

  • 必修化されているの?
    • そもそも政府のカリキュラムがゆるくてそういうのが無い
    • Coding 週間みたいなのはあり、その時にやる (CS Ed Week?)
  • Digital Literacy的な冊子が政府から配られた。

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お土産に持って帰っていいよと私達全員に配られた。逆にどこまできちんとやっているか気になる・・・・

9. PBL とか

  • 一時期オランダではPBL重視に振ったが、教科の学びが薄くなり、教科の学びが薄くなるとPBLとしても薄くなりがちで現在は教科の学びに潮流が戻ってきている。
  • (その後の日本人同士のディスカッション)力量のある先生であれば、PBLと教科の学びを両立できるが、そうでない先生がPBLやると薄い学びに留まってしまいそう。
  • なので大事なのは「さじ加減」かな (ベタな帰結

10. 教室訪問 10歳のYさんインタビュー

  • 好きな教科は算数。
  • 将来の夢は先生。
  • タイピングもスムーズ
  • Google Slideで頑張ってプレゼンテーション (プレゼンが派手なのは万国共通)
  • Google翻訳も使いこなし、このインタビューを実施
  • Scratchもしたことある。 (主に自宅・たまに学校。)
  • 学校は楽しい (その他4人くらいも全員同じ回答!)

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Yさんが頑張って英語でプレゼンしてくれた

総論

  • N=5だけど全員が「学校が楽しい」と言っていたのは素直に素晴らしいと思う。
  • 日本の文部科学省の人と話すと「今度の指導要領ではインプットベースではなく何ができるようになるか」とおっしゃったりするが、オランダの場合は政府が山頂だけ決めて、その山をどう登るかを学校にきちんと権限移譲しているなという印象。
  • 最適な学習方法は子どもにより違うので、複数の山の登り方を用意する制度思想は素晴らしいと感じる。(だからといって、雑に社会実装すると当然デメリットは出てくるのですが)

余談

細かいことを気にせず、日本の学校にも是非あったら良いなと意見が一致したのがこちらのビールも出してくれるカフェ。

学校・地域の体育館・このコミュニティカフェが一体の施設に入っているのでこんなことが可能とのことです。

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校内のカフェ(ビールも飲める)