文科省概算要求のGIGAネットワーク375億円は日本の学校の貧弱なネットワーク環境を救うのか

文科省の概算要求に明るい動きがありました。

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これだけの新規予算がICT教育への投資でつくとは非常に画期的で、私がこの界隈に関わって始めて目にした金額です。(まだ4年強ですが(^_^;;

しかし、これも「銀の弾丸」ではないかもと感じ、久しぶりにブログを書くことにしました。

1.そもそも、学校にネットを引くのは

日本で育った皆さんの多くは〇〇市(区町村)立〇〇小学校を卒業しているかと思います。その名前が示すように小中学校の多くは市区町村が設置者であり、市区町村の予算で校舎や設備を整える必要があり、ネットワークについても原則として市区町村が整備する必要があります。

2. これまでの取り組みと現状

これまでは、学校のICT教育環境整備については「地方財政措置」という形で、「自治体の財政力に応じた」交付金が、各自治体に国から交付されていました。財政力に応じたということは(ざっくり)東京23区のような税収が豊かなところは、「各自治体の税収でできるでしょう」ということで、特に国からの交付がなく、逆に地方の「税収乏しいよね」というところには手厚く交付されるということになります。

しかしこの地方財政措置はその他の項目(病院とか、消防とか、道路とか、その他の教育全般とか)も含めて、「あなたの自治体の総額は○○億円です」と交付され、各自治体はその総額を各自治体の考え方で差配することができるのです。

その為、よく「票になりにくい」と言われる教育は予算が削られがち、かつ教育の中でも分かりやすい「エアコンの整備」や喫緊の「安全対策」等に割かれがちであり、結果としては下記のようになかなか学校のICT環境の整備が進まないということになっています。 (例えば普通教室の無線LAN整備率は40.7%です。)

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3. この取り組みの何が画期的なのか

上述のように今の課題は「他と一緒のお財布になっている」ことです。しかし、今回は使途が決まっている補助金なので、国として「ICT教育環境整備に使って欲しい」と自治体に渡したお金が橋や病院や和式トイレの洋式化に使われているということが起こらなくなります。 また、金額面でもこの取り組みは単純に一校あたり600万円以上の予算が想定されているようなので、流石にそれなりの環境に出来るのではないかと期待できます。*1

4. しかし気になる点も

とここまで、持ち上げてきたものの2つ気になる点があります。

気になる点①「モデルケースが広く知られていない」

ITでオープンソースとか勉強会とかのカルチャーから地方行政に関わるようになって、IT側では良くある「上手くいったパターン」、「上手くいかなかったケース」をシェアする文化が弱いなと感じています。

恐らく日本の学校のネットワークのベストプラクティスは、「都会か田舎か」x「大規模校か小規模校か」x「昔ながらの配線とか回しにくい構造か、新しい配線とかしやすい構造か」x「松竹梅どのグレードか」というような要素でそれぞれのベストパターンが概ね見出せるはずです。

しかしながら、事例発表といえば各企業のPR的なケースが多く「それが本当にベストなのかしばしば怪しい」のと、「皆様の大切な税金を使っているので失敗とは認められない」為、ベストパターン、アンチパターンが広く知られていないというのがあります。

そんな中、来年度から3カ年計画で進むと「ベストパターンが見えない中、1/3が整備されてしまう」ということを懸念しています。

(もしよければベストやアンチのパターンご存知の方、ご教授頂けると幸いです!)

気になる点②「自治体側も予算を組む必要がある」

今回は補助率が1/2です。半分は補助してくれますが、自治体側も予算を立てないと使えません。「来年度の予算なら間に合うじゃないか」と多くの一般市民だと考えるのですが、実は来年度の予算に向けた見積もりは自治体の内部的な一次締め切りを迎えているところもあったりします。

自治体が早急に対応しないと、国は補助金を用意したけど、各自治体側で予算がつかないとならないかなと懸念をしています。

5. じゃあどうしたらいいの?

①あなたが教育行政に携わる人なら

このブログの記事や文科省の情報等を然るべき人にシェアしてください。 ちなみに、プログラミング教育の普及で全国の先生とお話しするときに「うちの自治体は環境整備が進まなくて、、、」と嘆く先生等が多いのですが、この記事を指導主事にシェアするという簡単なアクションを逃してしまうようであれば、その自治体の環境整備が進む(かもしれない)きっかけを逃していると思います。

②あなたが教育行政の外の人であっても

そもそも我が国のICT教育環境が進んでいないのは誰のせいでしょうか?

もちろん、教育行政の中にも課題があります。しかし、我が国は民主主義の国家であり、最終的には国民が選んだ政治家が決めてる法制度であったり、市民が選んだ市長、地方議員が予算の使い方を決めています。

このブログを読み「学校のネットワークの整備必要だよね」と思った方は是非その意思を然るべき人に表示してください。 その相手は、例えばお子さんの通ってる学校の校長先生かもしれないですし、地元の知り合いの議員さんかもしれません。あるいはSNSであなたのひと言をつけてシェアするだけでも良いかもしれません。

また、その際には「変な圧力」とならないよう丁寧なコミュニケーションを心がけた方が結果的に効果的です。例えば、「こんなニュースを見たのですが、うちの自治体/学校のインターネットは大丈夫なんですか?」というように普通の市民として当たり前に感じるであろう不安を投げけると良いでしょう。

また、回答が芳しくない時は「どうすると良くしていけますかね?私に出来ることは何かありませんかね?」と「子ども達の未来を一緒に見ている」というスタンスを示した方が良いと感じています。

長くなりましたが、

この動きが皆さんの力で次の世代の教育の一助になればと考えています!

*1: (375億円[国] + 375億円[自治体]) / 12,000校[日本の学校数の1/3]