文科省概算要求のGIGAネットワーク375億円は日本の学校の貧弱なネットワーク環境を救うのか

文科省の概算要求に明るい動きがありました。

resemom.jp

これだけの新規予算がICT教育への投資でつくとは非常に画期的で、私がこの界隈に関わって始めて目にした金額です。(まだ4年強ですが(^_^;;

しかし、これも「銀の弾丸」ではないかもと感じ、久しぶりにブログを書くことにしました。

1.そもそも、学校にネットを引くのは

日本で育った皆さんの多くは〇〇市(区町村)立〇〇小学校を卒業しているかと思います。その名前が示すように小中学校の多くは市区町村が設置者であり、市区町村の予算で校舎や設備を整える必要があり、ネットワークについても原則として市区町村が整備する必要があります。

2. これまでの取り組みと現状

これまでは、学校のICT教育環境整備については「地方財政措置」という形で、「自治体の財政力に応じた」交付金が、各自治体に国から交付されていました。財政力に応じたということは(ざっくり)東京23区のような税収が豊かなところは、「各自治体の税収でできるでしょう」ということで、特に国からの交付がなく、逆に地方の「税収乏しいよね」というところには手厚く交付されるということになります。

しかしこの地方財政措置はその他の項目(病院とか、消防とか、道路とか、その他の教育全般とか)も含めて、「あなたの自治体の総額は○○億円です」と交付され、各自治体はその総額を各自治体の考え方で差配することができるのです。

その為、よく「票になりにくい」と言われる教育は予算が削られがち、かつ教育の中でも分かりやすい「エアコンの整備」や喫緊の「安全対策」等に割かれがちであり、結果としては下記のようになかなか学校のICT環境の整備が進まないということになっています。 (例えば普通教室の無線LAN整備率は40.7%です。)

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3. この取り組みの何が画期的なのか

上述のように今の課題は「他と一緒のお財布になっている」ことです。しかし、今回は使途が決まっている補助金なので、国として「ICT教育環境整備に使って欲しい」と自治体に渡したお金が橋や病院や和式トイレの洋式化に使われているということが起こらなくなります。 また、金額面でもこの取り組みは単純に一校あたり600万円以上の予算が想定されているようなので、流石にそれなりの環境に出来るのではないかと期待できます。*1

4. しかし気になる点も

とここまで、持ち上げてきたものの2つ気になる点があります。

気になる点①「モデルケースが広く知られていない」

ITでオープンソースとか勉強会とかのカルチャーから地方行政に関わるようになって、IT側では良くある「上手くいったパターン」、「上手くいかなかったケース」をシェアする文化が弱いなと感じています。

恐らく日本の学校のネットワークのベストプラクティスは、「都会か田舎か」x「大規模校か小規模校か」x「昔ながらの配線とか回しにくい構造か、新しい配線とかしやすい構造か」x「松竹梅どのグレードか」というような要素でそれぞれのベストパターンが概ね見出せるはずです。

しかしながら、事例発表といえば各企業のPR的なケースが多く「それが本当にベストなのかしばしば怪しい」のと、「皆様の大切な税金を使っているので失敗とは認められない」為、ベストパターン、アンチパターンが広く知られていないというのがあります。

そんな中、来年度から3カ年計画で進むと「ベストパターンが見えない中、1/3が整備されてしまう」ということを懸念しています。

(もしよければベストやアンチのパターンご存知の方、ご教授頂けると幸いです!)

気になる点②「自治体側も予算を組む必要がある」

今回は補助率が1/2です。半分は補助してくれますが、自治体側も予算を立てないと使えません。「来年度の予算なら間に合うじゃないか」と多くの一般市民だと考えるのですが、実は来年度の予算に向けた見積もりは自治体の内部的な一次締め切りを迎えているところもあったりします。

自治体が早急に対応しないと、国は補助金を用意したけど、各自治体側で予算がつかないとならないかなと懸念をしています。

5. じゃあどうしたらいいの?

①あなたが教育行政に携わる人なら

このブログの記事や文科省の情報等を然るべき人にシェアしてください。 ちなみに、プログラミング教育の普及で全国の先生とお話しするときに「うちの自治体は環境整備が進まなくて、、、」と嘆く先生等が多いのですが、この記事を指導主事にシェアするという簡単なアクションを逃してしまうようであれば、その自治体の環境整備が進む(かもしれない)きっかけを逃していると思います。

②あなたが教育行政の外の人であっても

そもそも我が国のICT教育環境が進んでいないのは誰のせいでしょうか?

もちろん、教育行政の中にも課題があります。しかし、我が国は民主主義の国家であり、最終的には国民が選んだ政治家が決めてる法制度であったり、市民が選んだ市長、地方議員が予算の使い方を決めています。

このブログを読み「学校のネットワークの整備必要だよね」と思った方は是非その意思を然るべき人に表示してください。 その相手は、例えばお子さんの通ってる学校の校長先生かもしれないですし、地元の知り合いの議員さんかもしれません。あるいはSNSであなたのひと言をつけてシェアするだけでも良いかもしれません。

また、その際には「変な圧力」とならないよう丁寧なコミュニケーションを心がけた方が結果的に効果的です。例えば、「こんなニュースを見たのですが、うちの自治体/学校のインターネットは大丈夫なんですか?」というように普通の市民として当たり前に感じるであろう不安を投げけると良いでしょう。

また、回答が芳しくない時は「どうすると良くしていけますかね?私に出来ることは何かありませんかね?」と「子ども達の未来を一緒に見ている」というスタンスを示した方が良いと感じています。

長くなりましたが、

この動きが皆さんの力で次の世代の教育の一助になればと考えています!

*1: (375億円[国] + 375億円[自治体]) / 12,000校[日本の学校数の1/3]

コンピュータを使わないプログラミング学習について

先日の 東京都のプログラミング教育が少し怪しいが思いがけずシェアされ、執筆した本人が一番驚いています。(4日間で2万人近くの方にご覧いただきました。)

前回の記事ではざっくりと「 実際には運転をせずに、座学やシミュレーターだけで車の運転免許を交付しているようなもの 」とコンピュータを使わないプログラミング学習活動を一刀両断してしまいましたが、「その点をもう少し詳しく聞きたい」との声をいただきました。

今回の東京都の件に限らず 一般論として議論 したいと思います。

(私はいわゆる研究者/アカデミアではなく、この界隈の一実践者なので不正確な点がもしあれば温かな心で指摘いただけると幸いです)

① そもそも何故プログラミング必修化なのか

色々な議論はあるのですが、

①-1. 平たい言葉でいうと、

これからの時代、コンピュータのことをきちんと分かり、活用できる力が必要だからです。

①-2. 行政的なコンセンサスとしては、

例えば中教審の議論では、「情報化の進展により社会や人々の生活が大きく変化し、将来の予測が難しい 社会においては、情報や情報技術を主体的に活用していく力や、情報技術を 手段として活用していく力が重要である」というのが根底にあります。

既存の教科の学習を深めるだけでなく、情報や情報技術を適切に活用していく力(情報活用能力)を育む必要があり、その一要素としてプログラミング(的思考)があるのです。(学習指導要領の総則に記載があります)

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図:学習指導要領 総則での情報活用能力の記載について(著者要約)

② 何故そんな回りくどい方法で「コンピュータを使わずにプログラミング・コンピュータサイエンス *1 を学ぶ」のか

コンピュータでのプログラムの動作というのは非常に高速であり、その計算過程を人が理解しやすい形で確認出来ない事も多いです。

また、仮に計算過程を見ることができても、その背後の考え方について深く理解しようとした時に画面からの視覚情報だけでは理解出来ない学習者もまま現れます。

そこで、コンピュータの動作を子どもたちにとっても親しみのあるアナログな手段(体、手、紙等)を使い理解する手法として Computer Science Unplugged という手法が生まれました。

コンピュータの動作についてコンピュータだけだと理解が困難なので、一旦アナログな手法で学習し、コンピュータの動作を理解しましょう 」ということです。

例えば、背の順を「ソート」と捉えた例がこちらです。


人力アルゴリズム01 〜バブルソート〜

実際にこちらの書籍 では各章ごとに「実際のコンピュータでは」という形で学習内容をまとめています。

更に詳しくは こちらの書籍CS Unplugged の Web 等をご覧ください。

日本の小学校現場では、、

さて、2020年度からの小学校プログラミング必修化でもコンピュータを使わない学習活動がもてはやされています。

また、2年前に出した拙著やみんなのコードが運営するプロカリにおいてもコンピュータを使わない活動を含む学習活動の事例があります。

その学習活動をプランニングする時に気をつけているのは、前述の本来のコンセプトと同じく、アナログな手法だけに留まることなく、 アナログな手法を通じてプログラミング等のコンピュータの特性についての理解が深まるよう にという点です。

例えば、ループの概念を理解する為に、ダンスを作って実際にいくつかの動作を繰り返して踊るのですが、 それだけに留まらず、次の時間には実際のコンピュータでプログラミングをする 等です。

③ では、なぜコンピュータを使わない事例だけではまずいのか

①で指摘したように、コンピュータを理解し活用する力(情報活用能力)の一部としてプログラミングの学習活動が位置付けられています。

②で指摘したように「一旦アナログに出て、再びコンピュータに戻る」学習であれば、①の要件を満たす可能性はあります。(みんなのコードは気をつけています)。

しかし、実際子どものコンピュータを使っての体験の時間が無いと中々厳しいでしょう。

また、百歩譲って時間が無いだけだったとしても、「 その考えはコンピュータに戻せる思考方法とは言えない 」事例もしばしば見かけるのも事実です。

ということで、プログラミング必修化をした背景からすると、「コンピュータを使わない活動だけ」というのは適切ではありません。


【余談1】既存の授業の改善策として

ちなみに、既存の授業の改善策としてフローチャート等のプログラミングでも使う考え方を応用する事は多いに有りだと思います。

しかし、それだけをもって「プログラミング教育の実践として」言うのは流石に無理筋だと考えています。

【余談2】コンピュータを使わない学習活動に取り組もうとしている先生たちに

上述の「コンピュータに再び適用できるか」という観点に加えて、もう一つご理解いただきたいことがあります。

それは「コンピュータを使った方が簡単」ということです。

コンピュータを使わない学習活動だと子どもが不規則な事を言ったときにとっさに軌道修正をする必要が出てきます。

例えば、上述のダンスをプログラムしようという例で子どもが「キック」ブロックの横に「まわる」ブロックをつなげた時に先生はどうやって軌道修正したらいいでしょうか?難しいですよね。

そのような観点からも先生が始めてプログラミングの学習活動に取り組む際にはコンピュータを使う学習活動をお勧めしています。

*1:コンピュータサイエンスはプログラミングを含むより広範な学問領域です

東京都のプログラミング教育が少し怪しい

みんなのコードは「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」とのミッションで「都市部は順調なので課題は地方」と地方を頑張ってきました。

特に東京都はこれまで全国の都道府県の中でも比較的準備を計画的に進めているかに見えていました。

しかし、東京都教職員研修センターが発行した昨年度の紀要での小学校プログラミング教育についての事例が『 コンピュータを使わない活動だけ 』とにわかに怪しいとのことで久しぶりにブログを書くことにしました。

そもそもこれまでのプログラミング必修化の経緯(おさらい)

国レベルでの必修化の準備

このブログをお読みの方にはご存知の方も多いかもしれませんが、2016年4月に小学校段階からのプログラミング必修化の方針が発表され、

  1. 小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議 (私も参加 2016年度 前半)
  2. 中央教育審議会答申 (2016年12月)
  3. 新学習指導要領に反映 (2017年3月)
  4. プログラミング教育の手引き (2018年11月)

との段階で方向性が具体化してきました。

その中で、Step1より

「子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの」

との記載があり、以降もそれを踏まえた指針が示されています。 (これに様々な批判もあるのは承知していますが今回は議論しません。)

 その中ではコンピュータを使うことをベース(主)にしつつ、コンピュータを使わないアンプラグド *1 の活用を含み(従)連携することも可能という事になっています。

例えば、プログラミング教育の手引き第二版には下記のような記述があります。

コンピュータを用いずに行う指導の考え方 コンピュータを用いずに行う「プログラミング的思考」を育成する指導に ついては、これまでに実践されてきた学習活動の中にも、例えば低学年の児童を対象にした活動などで見いだすことができます。ただし、学習指導要領では児童がプログラミングを体験することを求めており、プログラミング教育全体において児童がコンピュータをほとんど用いないということは望ましくないことに留意する必要があります。コンピュータを用いずに「プログラ ミング的思考」を育成する指導を行う場合には、児童の発達の段階を考慮し ながらカリキュラム・マネジメントを行うことで児童がコンピュータを活用しながら行う学習と適切に関連させて実施するなどの工夫が望まれます。 (プログラミング教育の手引き第二版より)

東京都はこれまで着実に準備してきたように見えたが、、

  そんな中、東京都教育庁も 2017年度に「高度IT利活用社会における今後の学校教育の在り方に関する有識者会議」という会議を全国に先駆けて立ち上げて単に文部科学省に言われたプログラミング教育を実施するだけでなく、どういった教育が良いか検討をはじめました。

 小学校プログラミングについても2017年度にまずは7校の推進校を立ち上げました。新しいことを始めるのに小学校だけで実施するのは厳しいので7校に7つの企業をマッチングし年度を通してどういった授業が良さそうか実証を行いました。

 その後 2018年度も7校だけは足りないので離島も含めた各市区町村1校以上の75校を推進校に指定し、この75校についても引き続き学校だけでは厳しいので企業とマッチングし実践を積んできました。

今回の研究紀要

何がまずいのか

 東京都教職員研修センター紀要 第18号 という東京都の公式な研究で各学校等へ配布され今後参照されるであろう研究報告に実践が5件掲載されているのですが、「その 全件がコンピュータを使わない学習活動 である」という点です。

 例えて言うならば、 「 実際には運転をせずに、座学やシミュレーターだけで車の運転免許を交付しているようなもの 」 です。

どうしたらよかったか

 これだけで解決するとは言い切れませんが、推進校と同じようにITについて分かる人を巻き込む必要は最低でもあったと考えます。(みんなのコードも本取組について認識していませんでした。)

 また、これは完全に推測ですが、教育行政でよく起こる問題として、教育委員会の本庁(推進校を主管)と教職員研修センターの連携が「縦割り行政」になっていて、うまく連携していないのが本件の遠因にあるのかもしれません。

今後どうしていくか

 教職員研修センターにおいては、同紀要の末尾に書かれているように今後コンピュータを使った活動をきちんと打ち出していく必要があるでしょう。みんなのコードとしては、順次関係各方面への問題提起をしていきます。

 ただ、こういった事例は今後も他の自治体で発生する可能性があります。 もし読者の皆さまがそういった事例を目にしたら、本記事を参考に躊躇なく問題提起を していただけると幸いです。その問題提起により全国のプログラミング教育が少しでも良い形になるかと思っています。

*1:元々はComputer Science Unplugged というプログラミング教育よりも上位の概念である学問体系のコンピュータサイエンスをコンピュータを使わずに学ぶ手法

Microsoft Education Exchangeに参加してきました

Microsoft Education Exchange (E2) というMicrosoft社の世界中の教育イベントに参加させて頂く機会に恵まれました。英語の理解で多少怪しいところもあるかもしれませんが、気づいたことをふり返って見たいと思います。

そもそもE2とは

Who

世界中の92カ国574名の教員が集まるシンポジウムです。日本からは小中高の教員7名くらいが参加していましたが、文字通り「全世界」からシンガポールに教員が集っていて、遠くは南アフリカの先生、サウジアラビアの女性の先生等、名前しか聞いたことの無い国の方と触れ合う機会に恵まれました。

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世界中の先生によるポスターセッション

What

メインの教員向けとサブのNPO向けの2ラインがあったのですが、日本では得ることのできない濃い学びの4日間でした。

教員向けでは

  • 世界的にも素晴らしい取組をしている先生による発表
  • 参加者同士でのグループワーク (テーマはComputational Thinkingを活かして授業案を改善(Hack!)するコンペ)
  • 各参加教員による授業のポスターセッション

等が行われました。

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ガーナで黒板でMSワードの授業をした先生が招待されて登壇

NPO向けでは

  • 本家 Prof. Tim Bell によるCS Unpluggedのレクチャー
  • code.org のよるComputer Science のFrameworkを考えるセッション
  • OECD, シンガポール, フィンランド等の先進的な取組の発表

等がありました。

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CS Unplugged 本家 Prof. Tim Bell と

Why

その名の通り「Exchange」に価値があったと思います。「指導要領が」とか「校長の理解が」とかではなく、どのような授業をしたら良いのかを参加者がそれぞれの頭で考え、それを他の参加者に伝えて、また考えを進化させていきました。数日の間ですが普段とは違うインプットとアウトプットを繰り返す事で考えを深めるそんな狙いで開催されているのだと感じました。

何を学んだか

自分の学びを振り返ると日本の立場を以下の三点から客観的に見ることが出来るようになったかと思います。

1.「Perfect Countryはない」

OECDの人、シンガポールの人、フィンランドの人などが登壇するパネルディスカッションで気づいたことです。シンガポールフィンランドの両国は同様にPISAのスコアが高いのですが、アプローチは両極端でした。シンガポールは標準となる機材(この時はmicro:bitの発表)を決め、全校に配布し、授業案を一つ開発してもらうというトップダウンの取組でした。一方のフィンランドは監査やルールではなく、教師の「信頼」に任せ、教師が新しい事を学ぶ余裕や、きちんと教育されている人が教師に就く制度を設計しているとのことでした。文化・政治等々の状況は国によって違うので、「銀の弾丸」は無く、自分たちはどうするべきなのかは自分たちで考えなければなと当たり前の事を確認しました。

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OECDシンガポールフィンランドの人などが登壇したパネルディスカッション

2. 日本の強さ

日本の先生の「授業作りの力」は高い(んだろうな)と感じました。Computational Thinking をComputer Science でない授業に取り込むという授業案を考えるコンペに私も参加したのですが、日本の先生が普通に考えている「単元/授業を通してのストーリー作り」やプログラミング指導教員養成塾で出ていた「国語での作文の大枠の作り方にComputational Thinkingを取り込む」といった授業の骨組みを作る考え方がチーム内から高く評価していただき、結果的にも表彰いただくことができました。選ばれし先生達が参加していますし、授業の現場を見せていただいた訳ではないのですが、テーマが決まってからの授業作りの腕については自信を持って良いと思います。

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私の所属したチームが表彰された!

3. 日本の弱さ

一方で課題もあります。まず、意思決定や改善のスピードです。北京で学校教育を支援している組織の人と話したのですが、「北京の学校は意思決定が導入まで3ヶ月も掛かって遅すぎる」と言っていました。この他にもアメリカでのcode.orgの教員養成やComputer Science Framework の早さをみているとこのままでは日本はまずいと感じました。次に自信を持って発表していく力が弱いと感じました。全参加教員によるポスターセッションがあったのですが、正直クオリティに疑問を感じるものも多くありました。しかし、皆さん自信を持って発表しており、「自信を持って発表していく」という姿勢はもっと見習わねばと感じました。

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作成した人曰く 「Computer Science Education の Everything が入っている」

次に活かそうと決めたこと 〜 Beyond 2020 〜

現状みんなのコードでの取組は2020年からの小学校プログラミング必修化のことにフォーカスしています。しかし、アメリカでのcode.orgの戦略、Computer Science Framework といったものを改めて学び直し何が次の教育に必要なのか考え行動に反映していこうと決意しました。

おまけ

打ち上げもグローバルでした ^^;;

↑全員先生 or 教育関係者 の打ち上げ

夏のみんなのコード諸々の活動 その3/3

プログラミング指導教員養成塾第二期生募集中。

この春から「プログラミング指導教員養成塾」というものをやっており、その第二期を今夏募集しています。一言で表すと「ライザップ型」と説明しており、結果を出す為のハード目な自主研修になります。

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何をやるの?

1. 学ぶ

まずは、プログラミング必修化の経緯、実践事例、様々な教材を手に取って学びます。当法人は先進的な先生や網羅的な教材会社とのネットワークがありますので、実際に複数の生の事例や実物の教材を学習いただきます。

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2. 考える

次項の「3.実践する」と繋がるのですが、各参加者が実施する授業を検討します。各個人で考えた授業案をベースに他の受講生と相互にレビューしブラッシュアップします。一期生は今日現在でここまで進んでいます。

3. 実践する

各自の学校にて実践していただきます。可能であればみんなのコードや他の参加者が参観できるとありがたいです。

4. 振り返る

各自の実践と他の参加者の実践を報告します。一発目から完璧に誰もが出来ません。相互のレビューで次への改善点を議論出来たらと思っています。

どんな参加者がいるの?

第一期は既に実践をしている強者が多かったですが、第二期はプログラミング教育に興味がありこれから実践する方が多いようです。

第二期においても、先輩メンターとして第一期生有志にアドバイスに加わっていただくようお願いしています。当法人の講師から与えられる情報も充実させるよう頑張っていますが、参加者相互での同期のようなコミュニティが参加して頂く魅力の一つのようです。

例えば前回は指導者からファシリテートしたわけでもないのに、学年 x 教科 でどこで実践できそうかとの議論が自然発生的に始まっていました。

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参加後どうなるの?

プログラミング必修化の各地のリーダーになっていただけると感じています。(既に第一期生で校内研修・市内研修だけでなく、他市での研修の講師を依頼される事例やメディアに取り上げられる事例が出てきています。)

また、第一期+第二期合わせて50以上の事例ができそうで、(全国統一ではなく各学校が実施方法を選択することになった)2020年プログラミング必修化の指導事例を作る中心的なコミュニティの一員になっていただけるかと思っています。

気になった方は

8月31日が募集締切です。(不明点があり決め兼ねている方もそれまでにご連絡ください。)

こちらのフォームからご応募ください!

831名の小学校の先生等とプログラミング教育を考えるシンポジウムを終えて。

今日プログラミング教育明日会議 in 東京無事終了しました。(2学期以降に四都市ありますが)みんなのコードとして夏休みの疾走はここまでで一区切りという感じです。

 

 

SNSで繋がっている方のシェアやご紹介・ご推薦もあり、今日の東京会場は小学校の先生や教育委員会の方を中心に218名の方にお越しいただき、ここまでの6都市での参加者数は831名になりました。

 

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小学校でのプログラミング教育普及活動をしていると「小学校の先生に本当にプログラミング教えられるのか」とかIT側の人に言われたり、「ただでさえ忙しいんだから勘弁してくれよ」と学校側の人に言われることも正直多いです。

 

しかし、批判されても折れたり諦めたりするつもりは1mmもありません。


「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」とのミッションの下、今回来てくれているような志の高い先生に核になっていただき、少しでも良い形で2020年の小学校プログラミング必修化がスタート出来るよう今後も日々行動あるのみだと思っている次第です。

 

本当は個別にお礼を申し上げないと行けないのですが、プログラミング教育明日会議にご協力いただいた先生、教育委員会、企業、NPO的なみなさま本当にありがとうございました。


今回のお礼は基本的には2020に向けての成果で返させて頂きたいと思いますが、今後ともご指導・ご支援いただけると幸いです。

 

 

夏のみんなのコード諸々活動します その2/3

8月7日に「先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本」という本を刊行します。

先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本

先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本

感じていた課題感

思えば、構想から刊行までちょうど1年でした。また、プログラミング必修化の「議論の取りまとめ」が出てから約1年強でした。

(賛否両論ありますが、)プログラミング的思考を育むべく教科の中でプログラミング必修化するという方針の中で、様々な解釈・授業事例・授業以外の取組が出た1年であったと思います。

ただ、客観的に見て、「子ども達の為になるか」「『俺の考える最高のプログラミング教育』になっていないか」「普通の学校の先生がトライできるか」等々の観点からみて玉石混交であったと思います。

文部科学省の必修化に至った経緯から授業実践事例紹介まで 多面的にプログラミング教育を紹介する一冊 にまとめました。

中身

私(と共著の佐藤さん)が書いた部分も読んでほしいのですが、みんなのコードとご縁があった方のインタビューを中心にじっくりご覧いただきたいです。

  • 巻頭にはプログラミング必修化を取りまとめた大杉教育課程企画室長(当時)のインタビューを掲載しました。
  • 第一章では、プログラミング必修化を別として、そもそもコンピュータ・プログラミングとは何かを改めて考えるところからはじめました。
  • 第二章では、政府 / 文部科学省 / みんなのコードがプログラミング教育で何を目指しているのかを議論しました。若干、違っています :-)
  • 第三章では、今般の必修化でのポイントとなる「教科の中でどう実践するか」を中心に議論しています。
  • 第四章が一番の見どころで、各学校での実践例7件を掲載しました。授業の準備・授業の狙い・やってみての気付き・利根川からのコメント等で様々な教科・学年での実践事例を集めています。
  • 第五章も読者によっては深く読んで欲しい章で、首長・教育長・教育委員会・校長がどうプログラミング教育をリード or 支援するかをインタビューしました。
  • 付録としてプログラミング教材リストと指導要領解説の関連抜粋もございます。

「プログラミング教育明日会議」来場前に是非ご一読し予習いただけると、事例発表や教材研究をより深い学びがあるのではないかと思っております。

さらに

プログラミング教育明日会議や各種研修会等のみんなのコードイベントに本書籍を持参いただいた方に「 学校のパソコン室に貼れるプログラミング普及啓発ポスター 」を差し上げます! (枚数に限りがあります><)

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