「失敗を恐れないでチャレンジする」ということ

教育行政と新しいことをやっているとよく「失敗を恐れずにチャレンジする」という話がでます。

プログラミング教育の導入期には「失敗もあり得る」とMicrosoft副社長、「教師・生徒がともに試行錯誤していく中で成果を」

チャレンジする主語は子どもだったり、成長してからの大人だったり、教員だったり、学校だったり、時にはみんなのコードだったり、さらには文部科学省だったり色々なのですが、どうも目線があっていないのではないかと思う事があります。

「失敗を恐れない」のイメージ

教員・官僚等の公務員系の方の「失敗を恐れない」は下図のようなイメージに感じます。

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「今までのやり方だと失敗しないで当たり前、でも多少の失敗が出ても咎めない方が良いだろう」という考え方に感じます。

一方で、自分が新しいことをチャレンジしている中(や恐らく多くの上手くいっているベンチャー)では下図のようなイメージで考えています。

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違いは何でしょうか、見ての通りチャレンジの数がまず違います。

評価のルール

では、どちらが優れているでしょうか。

これは採点ルールで変わります。

「昔ながら公務員ルール」

The 減点主義

  • ◎ 20点
  • o 10点
  • x -100点

→ 公務員的従来の仕事 90点

→ 公務員的チャレンジ -10点

ベンチャー的チャレンジ -1400点 oh,,,

「チャレンジング公務員ルール」

☓ の減点を減らそうと考えてみる

  • ◎ 20点
  • o 10点
  • x 0点

→ 公務員的従来の仕事 90点

→ 公務員的チャレンジ 100点

ベンチャー的チャレンジ 100点

「真のチャレンジャールール」

大成功にこそ価値がある。また、失敗からも学べる事があると考えている。

  • ◎ 100点
  • o 10点
  • x 1点

→ 公務員的従来の仕事 90点

→ 公務員的チャレンジ 91点

ベンチャー的チャレンジ 150点

どうしたら良い?

一概にどの採点ルールが良いかとはいえません。

(当然私もお医者さんには失敗を危惧して安全第一で治療して欲しいです)

しかし、あなたの上司/クライアント等が「 失敗を恐れずにチャレンジして欲しい 」と口先で言っている時、「 どのルールを頭に描いているのか 」を考え・確認してみるといいのではないでしょうか?

そのルールは妥当なのか 」、「 ルールを変えるとしたらどうするべきなのか 」是非議論していただけると、教育行政全般ももう少し「 失敗を恐れずにチャレンジする 」ようになるのではないかと思います。

小学校学習指導要領(案)が公表されてのパブリックコメントと所感

昨年12月の中教審の答申を受けて学習指導要領の改定案がパブリックコメントに出されました。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

全体として

個人的にも昨年開催されたプログラミング教育についての有識者会議で提案したことを、学習指導要領という硬い枠組みの中で可能そうな範囲においては、だいぶ反映されたように思います。 プログラミング教育については、「総則」、「算数」、「理科」、「総合的な学習の時間」で言及されております。総則では、プログラミングについて各学校が計画を立ててに実施する(カリキュラムマネジメントする)よう定められています。

ただ、昨年秋以降新たに出てきている課題や今後出てくるであろう課題等を改めてパブリックコメントから下記のようなことを書こうかと思っております。

1. 教科での実践事例について

昨年の小学校段階でのプログラミング必修化の発表以降「教科内でプログラミング的思考を育む」との方針に沿い、様々な実践事例が出てきています。

今回の指導要領でも例示されている算数5年生の多角形の事例のような教科内かつプログラミング体験として親和しているものもある一方で、具体的な例示はしませんが教科との親和が低かったり、逆にプログラミング教育の入門としてミスリードな事例等玉石混交なのが実情です。

先日発足した「未来の学びコンソーシアム」等を通じ、こういった不適切な事例についての確認をする必要があり、逆に指導要領で具体的な列挙がされている単元以外でも今後適切な事例が生まれるはずであり、指導要領で例示されていない単元においても良い事例が広まるような活動を推進する必要があると考えられます。

2.プログラミング必修化の指導要領解説編への記載について

小学校段階のプログラミング必修化については、昨年4月の「産業競争力会議」での「第四次産業革命に向けた人材育成総合イニシアチブ」の中での発表以来、国内外の実践事例も少ない中、急速に実施の方向が取りまとめられました。

その中で「教科内でプログラミング的思考を育む」という実施に当たっての方針が独り歩きしており、その背後にある「第四次産業革命ともない社会構造が変わるので学校教育も変わる必要がある」、「身近な生活がコンピュータ・プログラミングの働きの恩恵を受けている」といった「プログラミング必修化に至った文脈」の理解が教育関係者においても弱い傾向があります。

今後の指導要領の解説においては、ぜひ「なぜプログラミング必修化なのか」を教育委員会指導主事や校長等の管理職がきちんと語れるよう「どのように実施すればよいのか」だけでなく「その根底にある考え」から解説する必要があると考えております。

3.プログラミング教育の各階層における普及推進について

小学校段階のプログラミング教育活動をしていると、各階層毎のプログラミング教育への理解が必要だと感じております。

A.管理職・教育委員会等、B.中核となる教員、C.現場の多数の教員、 の3つの階層とすると、

A. 管理職・教育委員会等への普及については、

自身がプログラミング教育に直接携わるというよりも「必修化について背景から理解すること」、「自身もプログラミングについて短時間で良いので体験し実感を持って理解すること」、「次項以降の教員育成の支援をすること」等がまずは必要になります。

B. 中核となる教員への普及については、

英語における推進リーダーと同様に中核となる教員をまずは養成することが必要だと考えられます。

中核となる教員については、遠方への出張も含めた広域での研修参加、ICT機器・ロボットも含めた教材や授業研究(予算措置含む)、自治体内での研修会のリード役等の役割が必要と考えられ、茨城県古河市におけるエバンジェリスト制度等が参考になります。

C. 現場の多数の教員への普及については、

以下のような平成32年度からの逆算が必要だと考えられます。

  • 平成32年度の全面施行を考えると、平成31年度に最低でも各校1名が授業を実施し、校内研修にて横展開する必要があります。
  • 平成31年度に各校1名が授業を実施する為には、平成30年度に最低でも全市区町村1名が授業を実施し、市内情報教育研究会等で横展開する必要があります。
  • 平成30年度に全市区町村で授業を実施する為には、平成29年度に全都道府県で先進市区町村等が授業を実施し、都道府県内で横展開する必要があります。

まとめ

指導要領にどのように入るのもとても大事ですが、実際にはここからきちんと日本全国の先生に届き、日本全国の子どもにプログラミング教育の機会が届くまでが困難です。

みんなのコードとしては、「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」とのミッションの下、今後も行政・企業等と連携していきながら小学校段階のプログラミング教育の普及推進に必要なことを実施していく所存でございます!

大阪市が無料でプログラミング教育のパートナーを募集している件について

大阪市が小学校でのプログラミング教育進める為のパートナー事業者を「無償で」募集し、軽く炎上しそうです。

2020年から日本全国の小学校でプログラミングの必修化が予定されています。

学校の先生は99%以上がプログラミング未経験ですし、英語教育のようにこれまでの長い準備期間も無いですし、必修化まで3年しかないので、 各地の学校・教育委員会・自治体が大至急準備をするべき です。

しかしながら実態としては、去年急に確定した話でもあり、教育委員会等で権限がある方も「プログラミングをなぜ必修にするのかよく分からん」「どうやったらいいか分からん」というのが多くの方の実情です。

中の方と1,2度お会いしたこともあるのですが、大阪市のように、300校以上の小学校があり、文字通り「官僚的」で機敏ではない組織を動かすのは大変であったろうと思います。

当然、有償で行うべき事業でありみんなのコードも各自治体と永続的に実施できるよう協議をしていますが、無償でサンプル的な事業をやる大阪市 何もしていない自治体よりも大きく一歩先に進んでいる かと思っております。

※ みんなのコードは本事業に応募する予定はありません。

※ とはいえ募集の書き方が上から目線なのは良くないだろうと個人的には思っています。

プログラミング教育とICTインフラ

小学校でのプログラミング教育を進めると学校の先生等から十中八九「インフラの整備がー」とのコメントをいただきます。

そんな時はいつも、みんなのコードがオススメするHour of Code教材のようにブラウザベースで実施できる教材やルビィのぼうけん のようなコンピューターを使わないアンプラグドの活動があるので、学校のICTインフラに関わらず指導者の意志があればプログラミング教育が実施可能だと話しています。

しかし、先日都内のICT教育の先進校として有名な杉並区立天沼小学校の福田校長と話していたところ、先進校の違いというのを感じました。

天沼小学校とは昨夏ご縁があり、Hour of Code教材を数名の先生に紹介する機会がありました。 その後、校内の会議で全ての先生に更に紹介いただいたようなのですが、全教員がタブレットと常用している為、 すぐに検索しプログラミング教材を実際に触ってみた先生が多数 であったと話を聞きました。

天沼小学校が先進校と言われるのは単に「タブレットが何台あるか」といった表面的なレベルの話ではなく、「ICTをどのように使いこなし」、「新しいものも恐れずに向き合う」という「 文化レベルのインフラ 」が整っているから違うのだなぁと感じました。

学校でのICT整備を進めていく際には、ハード(台数/稼働率)に目が行きがちで、中身(プログラミング/既存教育)に踏み込んでいるだけで褒められるレベルですが、さらに文化のレベルのインフラまで踏み込んで居ると良い学校なんだろうなと思った次第です。

福田校長と私。

2017年の個人目標

2017年の個人の目標を達成するべく、晒せるだけ(≒ほぼ全て)公開します。

自己啓発
  • 人工知能で何か作る
  • ロボット(ハードウェア込み)で何か作る
  • 海外行く (仕事1カ国+プライベート兼1カ国+どちらか1カ国)
  • Blog記事 20本
家庭
  • 子どもと夕食 183日 (365日の半分)
  • 夕飯ダメでも風呂 50日 (週1日)
  • 妻とのデート12回 (月1回)
体づくり
  • ジム or ランニング 50回
  • 家筋トレ 50日
その他

K-12 Computer Science Education in Japan

背景

アメリカのACM 教育小委員会からK-12(小学校〜高校)教育でのコンピューターサイエンス教育についての国際比較で調査依頼が来て、日本の学校教育でのコンピューターサイエンスの実施状況を英語でまとめたのが有意義そうだったので、英語のままで公表します。

Background

Association for Computing Machinery Education Council subcommittee sent me survey of K-12 Computer Science Education in Japan.

I wrote rough report for them, And since it seems helpful for global CS Educational comparison, I publish that report on my blog.


My report

Thank you for getting interested in K-12 CS in Japan.

Let me explain overview of K-12 CS Education first.

Overview

There are elementary school (6 -12 years old), junior high school (12 - 15 years old) and senior high school (15 - 18years old) in Japan. Elementary and junior high school are mandatory. Senior high school is not mandatory but the entrance rate is over 98%.

Ministry of Education ( MEXT : http://www.mext.go.jp/en/ ) detects the government course guidelines every decade.

Senior high school

In senior high school, there is mandatory subject area named "Information". In current guidelines, every school chooses subject "Information Study for Participating Community" or "Information Study by Scientific Approach" for "Information". Only "Information Study by Scientific Approach" contains CS curriculum such as programming, data, network etc. But 20% of school chooses "Information Study by Scientific Approach". Information requires CS teaching license for teachers.

In next guidelines, 2 subjects will be merged and reassembled as mandatory subject "Information-1" and optional subject ”Information-2”. Both of them will contain CS curriculum. It will starts in 2020.

Junior high school

In junior high school, there is mandatory subject named "Technology and Home Economics ". It contains programming in section of "automatic measurements and controls". It will take around 4 hours but depends on teacher. In next guidelines which starts 2021, MEXT considers to increase hour and content.

Elementary school

In elementary school CS is not taught in current guidelines. But in next guidelines which starts 2020, programming will be mandatory in part of other subject such as science, math or art.

Training

We provides training for elementary school teacher. Some university provides training for senior high school teacher. Also in Japan, teachers have voluntarily study meeting in local area. (Not only CS but also all subjects)


Additional question are welcome to info[at]code.or.jp

みんなのコードがプログラミング教育の入門にこだわる理由

みんなのコードはこれまで専らHour of Code教材を使った授業・ワークショップのみを実施してきましたが、この度2つ目の教材として Linda Liukusさんの「ルビィのぼうけん」を題材としたワークショップを本日と明日(7月27日,28日)の子ども霞が関見学デー(内閣官房・情報通信技術総合戦略室)開催することになりました。

www.facebook.com

ルビィのぼうけん こんにちは!  プログラミング

ルビィのぼうけん こんにちは! プログラミング

色々な人とお話すると 「Hour of Codeの 次の 教材についてみんなのコードさんはどう考えています?」とよく聞かれます。

これは以前のBlog記事でも書きましたが、 この教材は "ビジュアルxチュートリアル・ドリル型"で、ビジュアル x 自由型 や テキスト x チュートリアル型等の他の優れた教材(ScratchやCodeMonkey等)に進んでいただくのが良いかと考えています。

(下図で言うと、AからB/C/Dに進んで欲しいと考えています。)

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一方で 「Hour of Code の 前の 教材についてみんなのコードさんはどう考えています?」と聞かれたことはありません。

これは "Zero to One" の著者であるピーターディールの言うように 私は「一見悪いように見えて、良いアイデア」こそがチャレンジすべきアイデア であると思っているからです。

「プログラミングが出来る人を増やす」ことにミッションを置いたサービス・製品は数多くありますが、

「プログラミングを体験する人を増やす」ことにメインのミッションをおいている法人はそれと比べると桁違いに少ないと感じています。

 

「スポーツと同じように、裾野の下が厚くならないと上の層は厚くならない」

というのは10年以上 WRO(World Robot Olympic)等の取組をしている株式会社アフレルの小林社長のメッセージですが、まさに テクノロジーの人材層を厚くする為に、どれだけ裾野を広げられるか チャレンジしてみたいと思います。

また、みんなのコードの3つ目の教材についてのよいアイデアある方はぜひご連絡ください!